「モーツァルト!」

モーツァルト中川晃教(鼻フック)で博多座マチネ。劇団☆新感線「花の紅天狗」の劇中劇の元ネタなので一度は観ておきたかったのだ。念願かなってうれしいです。
そもそもモーツァルトって天才でエキセントリックでフリーメイソンでスカトロ好きのかっ飛んだ人で、でも音楽作品だけはものすごいのよ=共感も理解も無理不可能な人物なので、なんかこんな「天才だけどダメ人間、でも少しはいいところもあるよ、愛」みたいな中途半端な人物に描かれてもなんだかなーという感じ。今回が初・中川晃教だったけど、鼻フックのくせに意外に上品な仕上がり。アッキーにはもっと野趣溢れるウンコ手づかみしてそうなスカトロスキーなモーツァルトを期待していたのでもうちょっとRock感溢れる方向で行ってもいいのでは。だめですか、すいません。しかし伸ばした音の最後を「〜〜〜〜っにゃ!」と水前寺チータ風味で締めくくるのはどうなんすか。あれがアッキーのRockなんですかね。嫌いじゃないけどちょっと気になった。
本日全体的に音のバランスが悪い。聞いてて気もちが悪くなってくるくらいだ。特に山口祐一郎の音声に関してはハウる寸前というか音割れ5秒前というかものすごくピーキーなうえ、でかすぎるよ!これは座席位置の問題じゃねえだろ。みんなでぐわーっと歌うシーンが何度もあるのだが非常に平板で、奥行きも深みも感じられない。普通にマイク通さずにみんなでせーので歌ったとしたら、大人数の中でも出てくる声=聞き分けられる声ってあるはずなんですよ。主旋律だったりハーモニーだったり声質がちがってたり好きな俳優の声だったり、抜けて聞こえてくる声があるはず。みんなで歌うってことは誰もが同じに歌うってことではなく、各の個性や特徴が混ざり合ってアンサンブルになっていくんだと思うんだけど、アンサンブルではなくどこつまんでも同じな書き割りっぽい音になってるというか。こっちも音のプロフェッショナルじゃないのでよくわかんないんだけど、ものすごく不自然な音の印象。というわけで1幕終わった時点でダメだあわない〜とあきらめる。
2幕はモーツァルト妻コンスタンツェ(大塚ちひろ)が出張ってくるのだが、まあこの人のソロの時が眠い眠い。決して下手じゃないんだけど、ソロを歌って聴かせられるほど歌にチカラがないというか、まるでカラオケ屋で歌うまいツレのを聞かされてる時の「上手いのはわかった、でも自分の次の曲いれてて早くそっちが歌いたいから早く歌い終われよ」という気分というか。はあそうですか、で?みたいな、聞いてて全然揺さぶられない。響いてこない。感情がのってないっすよ。
一路真輝はキレイだった〜。市村政親はリューマチでよぼよぼと弱ってるシーンの後で、モツレクの使者の不気味さと力強さをドガーンと出してきたときの落差を見せられ、うむむ、さすがという感じ。20世紀最後のアイドル・高橋由美子(可憐だ。好きだー)は紅天狗での「モーツァルト!」っぷりを考えると、アンタあんなアホ芝居に出演してよかったんですか(いい意味で)と心配になった。ローリーや橋本さとしみたいなちょっと崩れた雰囲気の役者がやるとはまりそうなシカネーダー役の吉野圭吾はがんばっているんだけど、そのがんばり感や生真面目感が透けて見えるというか。こういう役を違和感なく演じられるようになったときに「一皮むけた」役者になるのではないでしょうか。背も高いし実は結構好き。がんばって〜。
そしてなんと言ってもスーパースター山口祐一郎さま登場ではあいかわらず半笑いになりました。モーツァルト激ラブ!でも片想いなのというセンチメントな役柄を熱演!嘘!!だけど音がよくなかったから、うるせーうるせーわかったわかったってイヤンなエフェクトかかっちゃったので残念。それとおしっこはギリギリまで我慢しないように!
スコアはあんまし。もうちょっとモーツァルトのメロディをサンプリングしてバリバリやってるのかと期待してたのだが、モーツァルトの曲はちょこっとフレーズが出てくる程度というか全然目立たない。「僕こそ音楽〜♪」も、え?これ?みたいなうちに終わってしまった。男爵夫人のソロだけはある程度メロが残ったけど他は全然。やっぱりこの作品とは相性がよくないのかも。井上芳雄王子でもう一回観るつもりにしてたけどもういいや。