空き地

ご近所には歩道もなく道幅も狭い昔からある古い道と、宅地と商業地開発された新しい町と一緒にできた道幅が広い新しい道があり、どうしても車で走りやすく安全で沿線にショッピングセンターなどもある新しい道を使いがちになるわけですが、先日ひさしぶりに古い道を通ったら、交通量が減ったためか昔からある個人商店が店じまいしたりでかなり空き地が増えていました。

小学校近くの小さな公園前にあった床屋さんも、いつのまにか空き地になっていました。この床屋さんの店先にはちょっと古くさいヘアモデルのポスターが貼ってあって、店の前を通りがかるたび「アイパーってどんなパーマなんだろう?なんでアイ?パー?」と不思議に思っていたものです。
この床屋さんは2号の保育園時代からの同級生Yのおじいちゃんおばあちゃんの家でした。

Yは中1の文化祭の前日にいなくなりました。

子連れ同士で再婚した家庭の中でYだけが上手く噛み合ってなかったこと、小学校高学年頃から外遊びを一切させてもらえず2号とも遊ばなくなったこと、6年生なのに低学年にしか見えないくらい痩せて小さくて顔色が悪かったこと、中学の入学式で「あれがネグレクトされてる子だよ」と隣小学校出身の保護者間で噂になってたこと、中学生になっても身体は小学校中学年くらいしかなく制服がブカブカだったこと、Yが自宅に戻ってないと聞いた誰もが「親が殺して埋めたんじゃないのか」と疑ったこと、届けを受けた警察はYの行方ではなく自宅の捜索をが始めたこと、最後に話をした同級生や教員は何度も何度も警察から事情を訊かれたこと、数日後Yが警察に保護されたことは、町のみんなが知っているのですが、それ以降Yの姿は見かけなくなり、その後どうなったのかはわからないのです。

学校は知ってました。児童相談所も知ってました。同級生も保護者も、いろんな人が知ってました。でもこんなことになってしまいました。

Yはどこに行っちゃったんだろう。
床屋さんをやってたおじいちゃんとおばあちゃんはどこに行っちゃったんだろう。

親の再婚前は、おじいちゃんおばあちゃんがYの面倒を見ていたので、もし新しい家庭でうまくいっていなかったときにこの床屋さんにYが戻ってきてたらどうなってたんだろう。

床屋さんは今もまだ続いていたかもしれません。